むし歯になるメカニズムの基礎知識とその治療法
なぜむし歯になるの?
むし歯とは、むし歯菌がつくる酸によって歯のカルシウムが溶けている状態のことです。
そのむし歯菌は、歯の表面に付いた糖分が大好物!!だから、ご飯を食べたらきちんと歯を磨かなくてはいけないのですね。
さて、ここで豆知識。実は、歯はむし歯菌によって溶かされるだけでなく、自然にも溶けているんです。これを、歯科用語で「脱灰(だっかい)」といいます。 その一方で、歯が唾液中のカルシウムやリンを取り込んで、失ったカルシウムを補充します。これを「歯の再石灰化」といいます。皆さん、この言葉は聞いたことがあるのではないでしょうか。
そう、よく歯磨き粉のCMなどで出てくる言葉ですね。歯は、歯垢(プラーク)が付いていなくても、常にこの脱灰と再石灰化を繰り返してバランスをとっています。ですが、歯を磨かないでいると、自然な脱灰にプラスしてむし歯菌による脱灰が起こりバランスがくずれてむし歯になってしまうのです。
もちろん、歯を磨かない代わりに、キシリトールガムをかめば大丈夫、なんてことはありませんよ。歯の表面が汚れていたら、カルシウムやリンが吸収されませんから・・・
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原因01
細菌
虫歯の原因となる代表的な細菌に、ストレプトコッカス・ミュータンスがあり、ミュータンス菌や虫歯菌とも呼ばれます。
歯の表面に付着し、糖質から酸を作り出します。 -
原因02
糖分
食べ物や飲み物に含まれている糖質は虫歯菌が酸を作る材料に使われます。
甘いものをよく摂る方は酸にさらされる時間が長いのでむし歯になりやすくなります。 -
原因03
歯質
歯の質によりむし歯になりやすい人もいます。カルシウムやビタミンなどの栄養素を取り、バランスの良い食事が必要になります。
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原因04
時間
むし歯は甘いものを食べたらすぐできるものではありません。時間をかけて少しずつ酸を産生しむし歯を作ります。
自覚症状がなくてもむし歯はある!
さて、むし歯になるメカニズムがわかったところで、「私は、歯は痛くないし、しみたりしないからむし歯なんてありません!」と思っている人はいませんか?
歯科では、むし歯を4段階に分けています。厳密にいうと、むし歯かな?そうじゃないかな?という微妙なむし歯になり始めの段階をいれて5段階に分けることもあります。それぞれ、(CO)、C1、C2、C3、C4と言う呼び方をします。実は、「C2」の段階以下ではほとんど自覚症状がありません。
とくに「CO」では、これが本当にむし歯かどうか悩むくらい見た目にはわからず、しばらく様子を見て、むし歯になるか観察する必要があります。ちなみにこれは「CO(シーオー)」と呼びます。この「O(オー)」は「Observation(オブザベーション)」、つまり「要観察」と言う意味です。
このように「CO」はまだ完全にむし歯になっていない可能性もあるのですが、「C1」「C2」は立派な(?)むし歯で、歯の表面が侵されています。
昔より技術が進歩し、多少のむし歯は歯を削らなくても済むようになったのですが、それでもほとんどの場合、やむを得ずむし歯を削って除去する必要があります。そして、その削った部分を、いわゆる「つめもの」で埋める治療を行います。
目に見えないレベルであれば、再石灰化で失った歯の表面を取り戻すことは出来ますが、はっきりむし歯になり、削ってしまった歯は二度と元には戻りません。「なんとか再石灰化で・・・」と言うわけにはいきませんので気をつけましょう。
しみたり、痛みを感じたらもう手遅れ
「C1」「C2」は、歯の表面が侵されている程度ですが、これがもっとひどくなるとどうなるでしょう?
と、その前に、まずは歯の構造をご説明しましょう。
図のように、歯の一番外側にはエナメル質があり、その下に象牙質というものがあります。その下は歯髄という神経と血管がある部分です。
「C1」は表面のエナメル質が、「C2」はその下の象牙質までが侵された状態です。
そして、「C3」「C4」は、それぞれ神経と血管部分まで侵された状態と、歯の目に見える部分が全て溶けきってしまった状態です。
「C3」の状態では、死んでしまった神経を取り除き消毒をしてつめものをかぶせます。そのため、残っている歯も除去し、神経を取りやすくします。こうなると、根っこ以外は、もうあなたの歯はありません。
さらに、「C4」になると、ほとんどの場合歯を完全に抜いてしまうしか方法はありません。
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C0
初期の虫歯
細菌の排出する酸によって歯質が濁っていたり、色素が沈着していたりする状態です。
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C1
エナメル質の虫歯
歯の表面のエナメル質にう蝕が起きている状態です。穴が空いていると、より症状の進行が早い傾向にあります。
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C2
象牙質の虫歯
エナメル質の下にある象牙質にまで、う蝕が進行した状態です。象牙質の下には血管や神経が通っている歯髄があるので、痛んだりしみたりする場合があります。
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C3
神経まで侵された虫歯
象牙質の下にある歯髄にまで、う蝕が進行しているため、ズキズキと激しく痛みます。この状態を「歯髄炎」と呼びます。
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C4
歯の根まで達した虫歯
歯根より上の部分がむし歯によって溶けている状態です。膿が出てきたり、頬が腫れたりすることもあり体全体に悪影響を及ぼすリスクもあります。
むし歯の治療法
このようにむし歯は、「CO」以外はほとんどの場合、最終的にはつめものでつめたり、かぶせものををかぶせるという方法になります。
しかし、一言で「つめる・かぶせる」と言っても、さまざま種類があります。
詳しくは、当ホームページでもご説明をしていますので、ご参考になさってください。
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つめものについて
むし歯治療では、削った歯を補う部分につめものをします。
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前歯のかぶせものについて
前歯のかぶせものはお口の中で目立ちますので、見た目の綺麗さを重視した種類をご用意しております。
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奥歯のかぶせものについて
奥歯のかぶせものは耐久性が重要になります。目立ちにくいかぶせものをご用意しております。
また、やむを得ず歯を抜かなくてはならなくなった場合には、ブリッジや入れ歯を入れたり、インプラントで歯を補う方法があります。当ホームページでは、「入れ歯」についてご説明をしております。
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入れ歯について
歯を失ってしまった人への治療法です。当院では手軽に作製でき、調整も可能です。
根管治療について
虫歯を放置すると、やがて細菌は歯の神経「歯髄」にまで達します。すると何もしていない時でも歯がずきずきと痛んだり、食事の際に強くしみたりなどの症状が出てきてしまうのです。痛みのある状態を放置した結果、歯を失う可能性も出てきます。そのような状況を改善できるのが「根管治療」(歯の根の治療)です。
根管治療は、細菌に感染した神経や血管を少しずつ取り除き、根管内を綺麗に消毒していく処置です。できる限り清潔な状態にした後、支台を立てて被せ物を被せます。根管治療が適切に行われれば、痛みが改善し、きちんと食べ物を噛める環境を作り上げる効果が期待できます。
根管治療の流れ
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STEP1
治療前
むし歯菌により神経まで侵されている状態
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STEP2
根管の掃除
根管の中の汚れを完全に取り除きます。
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STEP3
薬剤による消毒・殺菌
根管の掃除をした後は、再びむし歯菌が付かないように消毒します。
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STEP4
根管充填
消毒して綺麗になった根管に薬剤を詰めて、封鎖します。
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STEP5
土台を入れ、かぶせものをする
土台を作ってかぶせものをしていきます。
治療後は定期検診へ
治療から予防へ
むし歯や歯周病は治療が終わったら終了ではありません。
再び、むし歯や歯周病にならないようにご自宅でのケアと歯科医院でのケアを続ける必要があります。当院での予防歯科では歯磨きの仕方や付着した歯石や歯垢の除去をして常にお口の中が清潔になるようにサポートしていきます。